轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

くらのすけるす

内蔵允留守

山本 周五郎

「キング」大日本雄弁会講談社、1949(昭和15)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,082 字 · 24 页

青空文庫

「岡田さまのお国はお遠くでございますか」

「近江です、近江の蒲生というところです」

そう云いながら、虎之助はふと、もう二十余日も一つ家に暮していて、まだ故郷の話もしていなかったことに気づいて驚いた。何処へいっても先ず訊かれ、またこちらからも語るべきことを、閑右衛門の家ではまるでその折がなかった。老人の人柄だ。虎之助はそう思った、老人は気づかぬところに、そうしたふところの広さを持っているのだ、彼はまた一つ、閑右衛門の心を覗き見たように思った。

「お母上さまはお達者でございますか」

父親は、兄弟はと、もつれた糸が遽かにほぐれだしたように、娘は次々と質問を始めた、今日まで訊きたいと思っていたことが、一時に口へのぼったのである。

二人は川原へ出ていた。虎之助は奈美と並んで、川原の冷たい礫の上に腰を下ろしながら、亡き父の事、達者ではいるがひどく子煩悩な母の事、孝心の篤い弟思いの兄の事などを、問われるままに語った。……夜の流れの誘いか月の光りの悪戯か、或いはまた、娘と二人きりで話すという初めての経験のためか、そうして話していることが、次第に虎之助の心の底に温かい感動を呼び起こしてきた。