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しゃしんにそえて

写真に添えて

宮本 百合子

「中條精一郎」(追悼録)、国民美術協会、1937(昭和12)年1月発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,315 字 · 7 页

青空文庫

父のところには、とにかくそういう英語で、しかも絵入りのがあるので、何か欲しいとせがんだら一冊の紫紺色表紙の本を貸してくれました。「古代ギリシア彫刻家」という題で、父が云うには、これはためになる本だし、絵もあり、活字もパラリとしていて、書いたのは女の人だからお読みということです。

私は奮起して字引と首引き、帳面に自分でわかったと思う翻訳をしてゆくのですが、女学校ではピータア大帝が船大工の習業をしたというような話をよんでいるのですから、どうもデルフィの神殿だとか、破風だとか、柱頭、フィディアス等々を克服するのは容易のわざでありません。女神の衣の襞がアテネの岸を洗う波とどうなったのか、至極混雑して、やがては従兄の援軍で、どうにか三分の二までやり、遂そのまま降参したことがあります。

父も父だと云ってしまえばそれきりのようですけれども、私にとっては楽しい記憶の一つとしてのこっております。

パリにいた或る日、父は私をつれてどこであったか裏町の骨董店歩きをして、私にいろんな家具のスタイルだとかを話してくれたことがありました。ある店で、柿右衛門を模倣した小さい白粉壺が見つかり、父が、しきりに外国で日本の作品が模倣されている面白さを云うので、では二人で歩いた記念にこれを買いましょうと、私がおそらく生涯に一度の骨董的買いもの