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かんこんそうさいはかせ
冠婚葬祭博士
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,762 字 · 30 页
「光子さん、これが宮崎君だよ。宮崎君、これが家内の光子です」
と清水君は一々名を呼んで紹介した。
夫婦と女中きりで、小ぢんまりした家だった。座敷にピアノが置いてあった。殆んど六畳間の三分の一を占めている。食事中、清水君は種々と家庭の消息を伝えた。
「そのピアノですよ、身分不相応なのは」
「はゝあ、大きなものですね」
「これの兄が独逸から帰る時、序に買って来たんです。こゝへ持ち込むのに大変でした。そら、畳が少し凹んでいるでしょう。根太が抜けたんです」
「成程」
これは僕も聞いていた。奥さんはピアノとベッドを持って来た。この二つが場所を取って仕方がないと言うのだった。尚お奥さんの里はお父さんも兄さんも医学博士で、病院を経営している。これも清水君の得意とするところらしい。
「家内の里は病院をやっているんですよ」
「はあ」
「これはお話したと思いますが、僕も病気になれば徒で入院が出来るんです」
「ハッハヽヽ」
「しかし少しぐらい金を出しても、入院なんかしない方が得ですから、こんな特権は何にもなりません。君はもっと有効なところから貰う方が宜いですよ」
「何ういうところが一番得でしょうか?」