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かんこんそうさいはかせ

冠婚葬祭博士

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,762 字 · 30 页

青空文庫

「しかし勧めるだろう? 斯ういうのがあるから貰っちゃ何うだって」

「いや、一向」

「それじゃ見放しているんだ」

「然うかも知れない」

「しかし可怪しいね。会社の方の成績が悪いのなら兎に角」

清水君は直接団さんに訊いて見たのらしい。或日、むずかしい顔をして、僕に食ってかゝった。

「宮崎君、君は僕の家内を誹毀したね?」

「ヒキ?」

「うむ。団さんのところへ行って、女性の持つ欺瞞性の実例として僕の家内を引用したろう?」

「さあ、何の話だい? 藪から棒で分らないが、兎に角、安心してくれ。僕は君の奥さんは大嫌いだから」

「それだよ。失敬な」

「何だい? 一体」

「初めて僕のところへ君を招待した時、僕の家内は丸髷の仮髪を被っていた。君はあの一事を女性の信じ難い実地例証として、団さんの奥さんに話したというじゃないか?」

「うむ、話した。世間話として」

「何ういう世間話だ?」

「女は何うでも構わない来客を仮髪で瞞す。若し気に入らないお婿さんなら、何んな手段を用いて欺くかも知れない。それだから見合は厭だ、と斯う言ったのさ」

「侮辱だ。家内は憤っているぞ」

「宜しく言ってくれ給え」

「お腹が大きいから我慢しているが、然もなければ、君の家へ乗り込んで、お母さんに談判すると言っている」