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かんこんそうさいはかせ
冠婚葬祭博士
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,762 字 · 30 页
「ホルモンを飲んでいるんですか?」
「注射ですよ。あれは飲むものじゃありません。一週一回だそうです。注射した翌日は頭が濃くなるから分ります」
「濃くなるって、毛があるんですか? あれで」
「毛じゃないです。禿の斑が濃くなるんです。地図みたいになっているでしょう?」
「さあ。こゝからは見えません」
「側に寄って見ると、汚い頭です。光頭会では駝鳥の卵のようなのを理想にしているそうですが、社長のはシミが沢山あるんです。それが地図のように見えます。つまりホルモンが利くと、地球儀の地図が濃くなるんです」
「成程。分りました」
「僕は時々社長の側へ行って、お辞儀をして来ます。それ丈けでも感化を受けますよ」
「社長と話すことはありませんか?」
「迚も/\」
この会話が暗示になったのか、一しきり社長の頭に話の花が咲いた。大きい頭だから、出来合いの帽子では間に合わない。社長はそれを誇りとしている。人間の値打は頭の大きさで定るものと思っているのらしい。社長の帽子を間違えて被って帰った社員は翌日呼び出されて、お褒めの言葉を頂戴したそうだ。
「僕は社長の頭を見ると、郷里の小学校長を思い出す。