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かんこんそうさいはかせ

冠婚葬祭博士

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,762 字 · 30 页

青空文庫

「これはいけない。いつの間にか始まった」

「いや、犬の話だ。その犬が忽ちグル/\廻り始めた。講堂の教壇だぜ。自分の尻尾を咬もうとして足掻くから、独楽のように廻る。校長が慌てゝ、こら/\/\と叱ったけれど、止まらない。皆笑ったぜ。然う/\、女の先生が怺え切れなくなって、ってしまった」

「よく転ぶ先生だね」

「前の先生とは別の先生だと思うんだけれど、妻は同じ先生だと言うんだ。犬が先だったか、東半球西半球が先だったか、これも覚えがない。妻もそこまでは明かでないが、転んだ先生は二度とも自分の級の受持だったから忘れないと主張するんだ。妻は当時一年生だった。僕は五つ上だから、六年生の勘定になる。無論その頃から嫁に貰おうの何のって心持はなかったが、家が近かったから、お互に知っていたんだ。僕が運動会で一等賞を取るところを見ていたと言うんだ。それならその時分から興味を持っていたのかと訊いたら、まさかと答えて笑っていた」

「…………」

「話していると種々共通の思い出がある。家が近かったから、中学校へ通うようになっても、道でよく見かけたものだ。或時……」

「…………」

「おや/\、皆行ってしまった。