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とううん

凍雲

矢田 津世子

「婦人文芸」1934(昭和9)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,121 字 · 29 页

青空文庫

「駄目だ」

莨を足で踏みにじって、いっ時、息を呑むようにしていたが、思いきって尋ねた。

「この前、遅くなって、なんとも言われなかったか」

「うん、何にも。でも、知ってて知らんふりしているかも知れないけど……」

仙太の気持はだんだん落ち付いてきた。そして、その後の出来事をずっと話した。父親は、自分の出様によっては、我を折ってくれる見込みも立っているけれど、母親がどうしても意地になっていて、承知しそうもない。「金で嫁を買ったんじゃあない」と頑張るのだ。――仙太は眼を伏せて言った。お高も眼を伏せてきいた。――二人の仲は、県下の学校に行っている時からのものだから、無論その愛は純潔で、何ら非難を受くべきでない。しかし、事がこう面倒になってきては、全く手の施しようもない。意地を張っている俺方の母親も分らず屋だが、犬っころみたいにお前を連れ帰ったお父さんも少し短気すぎる。でも、柳屋先生が元通りに納めてみせるって、今日も言っていたし、自分は何度も何度も頼んでおいたから、きっと万事旨くいくだろう。先生は、自分を役場の方へも世話してくれる積りだ。二人で別居して、水入らずの家をもて、と迄言って下さった。