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おとめのきとアブ・サルガ
処女の木とアブ・サルガ
野上 豊一郎
在线阅读野上 豊一郎《処女の木とアブ・サルガ(おとめのきとアブ・サルガ)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,098 字 · 20 页
恐るべき嬰児虐殺が行われた時、キリストは母と父に護られてすでに此のシカモアの木蔭にすやすやと睡っていた。
それは『マタイ伝』に出ているが、『童蒙福音書』(第八章九ー一三)にはこう記されてある。
「かくてシカモアの木の下に行きぬ。今マタリアと呼ばる。マタリアにて主イエス一つの井戸を湧き出ださしめ、それにて聖マリア彼の衣を洗えり、その国に一つの香液生じたり。主イエスより其処に流れ落ちたる汗の滴より生じたるなり。それよりメムフィスに行き、パロ(エジプト王)に逢い、エジプトに三年住まいたり。」
しかし、此の記事は信用ができない。聖家族がマタリアからメムフィスへ行ったというのは有り得べきことだと思うが、メムフィスとてもその頃はヘリオポリス(マタリア)同様すでに荒廃して王都ではなかった。その頃の首府はアレクサンドリアで、しかもパロはとっくに存在しなくなって居り、エジプトはローマ帝国の領土になっていたのだから、パロに逢ったということもおかしければ、エジプトに三年住まっていたということもどうかと思われる。少くとも『マタイ伝』の記事とは矛盾する。
『マタイ伝』に拠ると、初めて天使がベトレヘムでヨセフに現れて、イスラエルの国を去れと警告した時、またわれ汝に示さん時までエジプトに留まれと約束した。