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「しょじょさく」よりまえのしょじょさく

「処女作」より前の処女作

宮本 百合子

「若草」1931(昭和6)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,168 字 · 5 页

青空文庫

けれども、今日みれば、リアリスティックな厚みと素朴な熱誠がその作品のネウチで、農村と農民の生活はどこまでも、幼い人道主義的観点から描かれている。農村の窮乏の資本主義による経済的背景、階級としての農民などという認識は、どこにもない。つまり、断然過去の作品となったものだ。

だが、現在の自分とすると、この作品にある感じがつながっている。その小説のおしまいに、子供の作者は叫んでいる。

「悲しい兄弟よ、さようなら。今暫くの間左様なら! 今に自分はもっとあなたがたの役に立つものとなって、再び会おう!」

そういう意味のことを叫んでいる。

その後数年、自分はブルジョア文学の中で、この世の中に合理的な正義ある生活をうちたてることは、個人個人の自己完成によって実現されるだろうというふうに考えていた。

ところが、まず結婚生活の破綻で、一つの現実的な疑問にぶつかった。個人だけの力では、家庭というものにつきまとっている因習的な理解さえ根柢的に破壊することは不可能なんだ。

では、どこに、そういうわれわれの日常生活の意識をかえ、高め、颯爽たる社会的なものにする力があるか?

唯物史観をよんだ現代われわれの棲む資本主義社会の中で自分がどういう階級に属しているかという客観的な立場がハッキリ分って来た。