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しゅっけものがたり
出家物語
「オール読物 第三巻第一号」1948(昭和23)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,838 字 · 28 页
それから一ヶ月ほどして、戦死の主人を考えると悲しくなるから、主人の生死にかゝわらず、もう自分のことは忘れてくれ、一生、独身で子供の養育につくすから、という手紙がきた。
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それから一月ほど待ったがキヨ子はこない。
幸吉も次第に冷静となって、又、仕事に精がでるようになった。
幸吉は戦争このかた世の中が逆になったと思っていた。屋台のオデンは二十年来の商売であるが、昔は細々と食うのが精一杯で、少し景気よく飲むと、売る酒がなくなり、売る酒を買う算段もつかなくなった。
戦争になったら、さぞ困るだろうと思っていたのに、焼け野原がひろがるほど、もうかる。物価が上るほど、もうかる。終戦直後の半年ぐらいは超特別で、犬モツ猫モツ鼠でも肉気のものに菜ッパをまぜてカキまわして煮た奴を山とつんでおくと幾山つんでも売りきれる、長蛇の行列、財布などというものは半日の売上げを入れるにも役に立たず、お札というものは石油カンに投げこむ以外に手がないのである。
だから戦争、時代という奴は幸吉にはワケがわからず、まるでもう夢を見ている心持で、毎日山とつもって行く札束をアレヨと思うばかり、だからキヨ子を知った当座も、戦争と時代、ワケの分らぬ夢のつゞきのような気持で、なんとなく、そんな時代なんだな、という思いをぬけきることができ