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しゅっけものがたり

出家物語

坂口 安吾

「オール読物 第三巻第一号」1948(昭和23)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,838 字 · 28 页

青空文庫

してみりゃ、当節の女ばかりが、こうというわけでもない。このアマも、あたりまえのアマじゃないか。

畜生め。ダメだろうと、ヘタだろうと、大きにお世話だ。

「何を考えてるの?」

幸吉は返事をしなかった。

女は便所へ立って行った。置いてあるハンドバッグを見て、幸吉は中をあけてみた。別に変ったものがはいっているワケでもない。手紙が二通はいっていたのを、ぬすんで、火鉢のヒキダシへ入れた。別に深い考えがあって、したことではない。ひとつ読んでやろう、というだけのことであった。

いつもは衣服をつけると、さっさと帰るのに、ノドがかわいたと云って、一人でお茶をいれて飲んだり、天ぷらやオシンコをつまんだり、古雑誌をとりあげて頁をめくってみたり、色々ひまをつぶしている。

「今夜は帰らないのかえ。いつもにくらべておそいようだぜ」

「私、今夜はこゝへ廻るつもりで、うちのこと頼んできたから、いゝわ。でも、おそくなるから、もう帰るわ」

「あゝ、物騒だから、おそくならない方がいいぜ」

「時々遊びにくるわ。又、二三日うちにね」

「あゝ、おいで」

「こんど二号さんや三号さんに紹介してちょうだいよ」

「ふん」