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きりすてごめん

切捨御免

坂口 安吾

――貞操なきジャーナリズム――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,731 字 · 10 页

青空文庫

水戸の容疑者がヘイチャラな顔をして、アア、帝銀の問題ですか、と笑って云ったというのは、真犯人でなければ、それが当然そうあるべきことなのである。

私は、H画伯が真犯人か、どうか、それを論じているのではないのである。私などに、そんなことを論じうる能力があるべきものではない。

たゞ、私の言いたいことは、H画伯には、ともかく、容疑をかけられて然るべき合理性があった。金の出所とか、松井名刺の行方とか、二月十日から他出したことゝか、それに明確な解答が与えられざる限り、容疑をかけられるのは自然で、そこには、不合理はないのである。

首実検などという、原始、素朴、文化以前の方法に殆ど信頼の大半をかけているジャーナリズムの軽薄さを、指摘したかったのである。

然し、警察も、大いに責めらるべきだ。首実検が、かく人々に信頼さるゝに至ったのも、元はといえば、当局のつくった似顔絵という反文化的方法に、責任があるからだ。

又、当局は、アリバイ、ということを云う。半年以上もたっているのに、アリバイなんかゞ、何の役に立つものか。アリバイというのは、事件後、せいぜい一週間ぐらいが生命で、半年前に何をしたか、忘れているに極っている。