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はつたびのだいぼさつれんれい
初旅の大菩薩連嶺
木暮 理太郎
「霧の旅」1933(昭和8)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,508 字 · 19 页
白いガレの様な細い谷が一すじ高く喰い込んでいるのが目を惹く。翌日夫を登ることになろうとは元より知る由もなかった。
北に向って横を搦みながら藪の中を下ること一時間で、ミズナラ、トチ、ブナ、センなどの大木が生えている渓沿いの平に出た、道がある。それを辿って四、五十分進むと左から来る水のある沢に橋が架けてある。そこでお茶を煮て早昼飯にした。これは地図上の広里村とある広の字の下へ流れて来る沢らしかった。空模様が次第に悪化して、風が南に変ると雨が降って来た。そこで引返して桑西に泊ることとし、上流の方を少し踏査した後、幸に雨も小降りとなったので、十一時四十五分に道筋通りに下りに向った。一時間許りで炭焼の男に遇ったのを幸に、附近の山や谷の名称を質している中にまた雨が大降りとなったので、二時間許り小屋で過した。真木沢のツメが大峠であること、大峠の東の山は雁ヶ腹摺に相違ないこと、黒木の山の東の茅処を赤谷と呼ぶことなどは判然したが、日向別当、日向ジャクシ、ハメエバ、鎮西ヶ丸などは、あの辺だと指示されても、雲や霧が深いので慥めることを得なかった。
このハメエバはハマイバの転訛であるという。