轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しせい
刺青
谷崎 潤一郎
「新思潮」1910(明治43)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,651 字 · 12 页
「嘸お痛みでがしょうなあ」
と云いながら、快さそうに笑って居る。
意気地のない男などが、まるで知死期の苦しみのように口を歪め歯を喰いしばり、ひい/\と悲鳴をあげる事があると、彼は、
「お前さんも江戸っ児だ。辛抱しなさい。―――この清吉の針は飛び切りに痛えのだから」
こう云って、涙にうるむ男の顔を横目で見ながら、かまわず刺って行った。また我慢づよい者がグッと胆を据えて、眉一つしかめず怺えて居ると、
「ふむ、お前さんは見掛けによらねえ突っ張者だ。―――だが見なさい、今にそろ/\疼き出して、どうにもこうにもたまらないようになろうから」
と、白い歯を見せて笑った。
彼の年来の宿願は、光輝ある美女の肌を得て、それへ己れの魂を刺り込む事であった。その女の素質と容貌とに就いては、いろ/\の注文があった。啻に美しい顔、美しい肌とのみでは、彼は中々満足する事が出来なかった。江戸中の色町に名を響かせた女と云う女を調べても、彼の気分に適った味わいと調子とは容易に見つからなかった。まだ見ぬ人の姿かたちを心に描いて、三年四年は空しく憧れながらも、彼はなお其の願いを捨てずに居た。
丁度四年目の夏のとあるゆうべ、深川の料理屋平清の前を通りかゝった時、彼はふと門口に待って居る駕籠の簾のかげから、真っ白な女の素足のこぼれて居るのに気がついた。