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ぜんきてんまやけ
前記天満焼
国枝 史郎
「文芸倶楽部」1927(昭和2)年6月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 48,568 字 · 98 页
と、「アッ」という悲鳴が起こり、連れてドッタリ一人斃れ、つづいて「オッ」という声がした。見れば飛田と前川の二人が、抜身を下げたまま走っている。
見れば一つの死骸の側に、一人の武士が立っている。
「あぶなかったよ」と呟いた。他ならぬ宇津木矩之丞であった。血刀をダラリと下げたまま、しばらく呼吸を静めるのらしい。佇んだまま動かない。
と、ソロソロと首を下げ、足下の死骸を覗き込んだ。
「うむ、やっぱりそうだったか。……うむ、山村紋左衛門だったか」
それからホ――ッと溜息をした。
「これで三人が三人ながら、隠密だったということが、証拠立てられたというものさ。狂いはなかったよ、俺のニラミに」
だが、またもや溜息をした。
「と云うことは半面において、中斎先生の眼力が、狂ったという証拠になる。……和歌山、岸和田に関わる裁判、京師妖巫の逮捕などに、明察を揮われた先生の眼も、今はすっかり眩んでいるらしい。獅子身中の虫をさえ、観破することさえお出来なさらない。では……」
と呟くと悄然とした。
「一切の今回のお企てなども、その狂った眼から、性急に計画されたものと、こう解しても、誤りはあるまい」