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けんきょう

剣侠

国枝 史郎

「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页

青空文庫

、気絶して倒れた主水の姿が、みじめに痛々しく眺められた。

色づいた病葉が微風にあおられ体の上へ落ちて来たりした。

かなり長い間しずかであった。

と、その時人声がし、間もなく十数人の男女の者が、森の中へ現われた。

変わった風俗の連中であった。

赤い頭巾に赤い袖無、そんなものを着けている若い男もあれば、亀甲模様のたっつけを穿き、胸に大形の人形箱をかけた、そういう中年の男もあり、紫の手甲に紫の脚絆、三味線を抱えた女もあり、浅黄の股引、茶無地の筒袖、そういう姿の肩の上へ、猿をとまらせた老人などもあった。

それらはいずれも旅装であった。

秩父香具師の一団なのである。

平素は自分の家にいて、百姓もやれば杣夫もやり、猟師もやれば川狩もやるが、どこかに大きな祭礼があって、市が立って盛んだと聞くと、早速香具師に早変りして、出かけて行って儲けて来、家へ帰れば以前通り、百姓や杣夫として生活するという――普通の十三香具師とは別派の、秩父香具師の一団であった。

この日もどこかの市を目掛け親しい者だけで組をつくり、出かけて行くところらしい。

その中に一人旅装ではなく、髪は櫛巻きに銀簪一本、茜の小弁慶の単衣を着た、若い女がまじっていた。