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けんきょう

剣侠

国枝 史郎

「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页

青空文庫

剣光!

斜に一流れした。

陣十郎の横なぐりだ。

が、何の要介が、切られてなろうか飛び違った。

そこを二度目に切り込んだ主水!

またも鏘然と音がして、陣十郎の払った刀の、切先が延びて主水の股へ!

「あッ」

主水が地に仆れた。

「お兄様!」と簪を逆手に、それで陣十郎の足の甲を突き、機先を制した澄江が叫び、地を這って主水へ近寄った。

「今は憎さが!」と吼えながら、何という残虐陣十郎は、澄江の背を拝み打ち!

切ろうとした一刹那風を切って、浪之助の投げた石飛礫が、陣十郎の額へ来た。

「チェーッ」

片手で払い落とした隙を、ドッとあてた躰にあたり!

要介の精妙の躰あたりを食らい、もんどり打って二間の彼方へ、毬のように飛ばされた陣十郎! とはいえ彼も鍛えた躰だ、飛燕の軽さ飛び起きるや、這い廻っている主水の傍を、矢のように駈け抜けて一散に脱兎!

「待て!」と要介は追っかけたが、

「浪之助殿、貴殿は居残り、主水殿と澄江殿を介抱なされい!」

「かしこまりました」

「頼む」と云いすて、要介は韋駄天追っかけたが、この辺りの地理に詳しい彼、陣十郎はどこへ行ったものか露路か小路へ逃げ込んだらしい、既に姿は見えなかった。