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けんきょう

剣侠

国枝 史郎

「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页

青空文庫

「ちと物をたずねたいが」主水は早速話しかけた。

「へい、何でございますか」

「馬大尽とは何者かな?」

「馬大尽でございますか」

「馬大尽じゃと囃されて行った様だが、彼は一体何者かな?」

「木曽の大金持でございます」

「木曽の金持? 信州木曽のか?」

「へい左様でございます。信州木曽谷福島宿の奥所、西野郷に住居いたします。馬持大尽様にございます」

「馬持大尽? ははあ馬持の?」

「五百頭どころか一千頭にも及ぶ、たくさんの木曽駒をお持ちになって居られる、大金持の旦那様なので……お駕籠に乗って居られましたのが、その旦那様なのでございます」

「馬持の大尽様だから馬大尽?」

「へい、さようでございます」

「訳を聞いてみると不思議ではないな」

「へい、さようでございますとも」

「博徒風の男が五人ばかり、駕籠に附き添って行ったようだが……」

「高萩村の猪之松親分から、迎え出ました乾分衆で」

「高萩の猪之松? 博徒の頭か?」

「へい左様でございます。……赤尾村の林蔵親分か、高萩村の猪之松親分かと、並び称され居ります大親分で」

「それにしても木曽の馬大尽が、武州の博徒などと親しいとは?」

「それには訳がございます。