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けんきょう

剣侠

国枝 史郎

「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页

青空文庫

「だろうとわしも思っている。だからわしはやろうというのだ」

「へー、そいつア変ですねえ」

「わしには物事が退屈なのだ。そこで何かしら退屈でない、全身でぶつかって行けるような物に、ぶつかりたいものと思っていたのだ。……博奕、いや結構なものだ。……当分こいつにぶつかって行くつもりで」

「呆れましたな、とんでもない話だ。……秋山先生に知れようものなら、あっしゃアこっぴどく叱られますよ。……お連れしなけりゃアよかったっけ」

「先生に知れちゃア面白くない、こいつは秘密にして置くんだね」と浪之助はこう云うとクスクスと笑った。

2

秋山要介や源女などと、浪之助がこの地へやって来て、林蔵の家へ止宿したのは、半月ほど前であった。

あんな事件から親しくなり、浪之助はその後要介方へ出入りし、武術の話を聞かして貰ったり、新影流の教えを受けたりした。

ある日行くと要介が云った。

「源女殿を連れて秩父地方に参る。よろしかったら貴殿もご同道なされ」と。

「秩父地方に何か用でも?」

「旨くゆくと大金を掘りあて、まずく行っても変わったことを、いろいろ経験しましょうよ」

こう云って要介は意味ありそうに笑った。