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けんきょう

剣侠

国枝 史郎

「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页

青空文庫

親分乾児の関係が、武士の君臣関係より、もっと厳重で頼母しい。巧言令色、追従などという、そういういやらしいことが行なわれず、生一本で正直だ。

これが浪之助を喜ばせたのであった。

(俺も博奕をやってみようかな)

そんなことを思ってそう思ったことを、こっそり乾児へ云ったことがあった。

「親分に堅く云われて居るんで、杉さんに張らせちゃアならねえって」

こう云って乾児達は相手にしなかった。

これだけが浪之助には心外であった。

とうと浪之助は我慢しきれず、一度でいいから賭場を見せてくれと、今日林蔵へ押して頼んだ。

「仕方がないねえ」と云いながらも、断わりきれず浪之助を連れて、林蔵は自分の賭場の一つ、広谷ヶ原へ出かけて行き、今はそれの帰りなのであった。

三人は野良路を歩いて行く。

「親分これからどうなさいます?」

乾児の藤作が声をかけた。

「杉さんにもつきあって貰って、山城屋へ行って遊ぶとしようぜ」

「そう来なくちゃアならねえところさ。第一お山さんが大喜びだ」

3

上尾宿一番の遊女屋山城屋、その前までやって来たが、見れば表が閉ざされていた。

それでいて屋内からは賑かな、男女の声が聞こえてきた。