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すけごろうよざい

助五郎余罪

牧 逸馬

「探偵趣味」1926(大正15)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,407 字 · 15 页

青空文庫

何よりも、あの不自然な又七夫婦の態度、すこし過分な、羽二重の熨斗、四日前の大浚え、それから暗打ち――助五郎はにやりと笑った。一つの糸口が頭の中で見付かりかけた証拠である。足を早めて望月と並びながら、ずいと一本突っ込んだ助五郎には、もう持前の江戸っ児肌が返っていた。

「のう、家元さん、四日前にゃよく切れやしたの、え、おう?」

「――」望月は眼をぱちくりさせて立竦んだ。

「いやさ、絃がよく切れたということさ」

と助五郎は重ねて鎌を掛けた。

「え?」

「まあさ」と助五郎は微笑んで、「竪三味線は杵屋の誰だったっけ?」

「雷門。へへへへ」望月は明らかに度を呑まれていた。

「雷門、てえと竹二郎師匠かえ?」

「へえ」

「蔵前へ近えな」

「へへへ、和泉屋さんの掛り師匠でげす、へえ」

「ふうん」助五郎はやぞうで口を隠しながら、

「のっけから切れたろう――一番目は?」

「八重九重桜花姿絵」

「五郎時宗、お定りだ。こうっ、ぶっつり来たろう」

「恐れ入りやす、へっへ、何せ最初からあの仕末なんで、下方連中は気を腐らすわ、雷門は頭を曲げるわ、和泉屋さんはおろおろするばかり、へっへっへ、仲へ立った私のお開きまでの苦労と言ったら――して、あなた様は何誰で?」