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すけごろうよざい
助五郎余罪
牧 逸馬
「探偵趣味」1926(大正15)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,407 字 · 15 页
おろくが茶を持って這入って来た。
豊住又七というこの笛の師匠が、その芸に対する賞讃と同じ程度に人間として、色々悪い評判のあることは、助五郎も以前以前から聞き込んでいた。自信が強過ぎるとでも言おうか、万事につけて傍若無人の振舞いが多く、この点でも充分遺恨を含まれるだけのことはあったろうが、その上に、又七は有名な吝嗇家なばかりか、蓄財のためにはかなり悪辣な手段を執ることをも敢て辞さないと言ったようなところがある、とは専らの噂であった。
「道理で」と助五郎は考える。「普請こそ小せえが、木口と言い道具と言い――何のこたあねぇ、鴻の池又七とでも言いたげな、ふうん、こいつぁちっと臭ぇわい」
ふとおろくと話す男の声が、茶の間の方から助五郎の鼓膜へ響いて来た。又七はつくねんと蒲団の上に腕組みしている。助五郎は耳をすました。
「ええ、もう大分好いんでござんすけど――」と答えているのはおろくの声、男は見舞いに来たものらしい。
「へっへ、それゃ何よりの恐悦で」と、頭でも叩くらしい扇子の音。つづいて、
「でもね、お師匠さんの竹が暫らく聞かれねぇかと思うと、へっへ、あっしやこれで食も通りませんのさ、いや、本心。