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べんきょうき
勉強記
「文体 第二巻第五号(五月増大号)」1939(昭和14)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,952 字 · 36 页
入院し、実に貧弱な肉体ですなア、と医学博士に折紙つけられた挙句の果に、貯金をみんな、なくしたのである。
龍海さんは意気悄沈、まったく前途をはかなんでいたが、或る日、再び元気になった。というのは、フランス帰りの放浪画家とふと知りあいになったからで、この画家の話によると、巴里まで辿りつきさえすれば、あとは一文の金がなくとも、なんとか内職で生きのびながら絵の勉強ができるという耳よりな話なのである。これは実際の経験談で、龍海さんを納得させる力があった。
その日、ただちにその場から、忽然として、すでに龍海さんは貯金の鬼であった。一食八銭の食事も日に二度にきりつめ、あるときは一食にへらし、フラフラしながら学校へ来て、水をのみ、拾った金も遠慮なく貯金した。
「今日、五十銭、拾いました。すぐ、貯金して参りました」
龍海さんは必ず按吉に白状した。まっかになって、うつむいて、白状した。龍海さんの気持としては、誰かに白状しなければならなかったに相違ない。巡査に白状するよりも、按吉に白状するのが便利であったのであろう。拾ったとき早速郵便局へ駆けつける用意ではあるまいけれども、懐中に、年中貯金通帳を入れていた。