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けしょうのもの
化生のもの
豊島 与志雄
「世界」1950(昭和25)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,086 字 · 27 页
お腹がぶくぶくふくらんできて、お尻がでっぱってきて……わたくし、結婚中に姙娠しないでよかったと、つくづく思いますわ。」
「今だから、あんた、そんなことが言えるんです。わたしなんか、三人も子供を産みしたよ。」
「それは、昔のことでございましょう。」
「当り前じゃありませんか。」
「昔だったら、構いませんわ。わたくしでも、昔のことなら平気ですわ。いま、この身体で……と思うと、ぞっとしますの。」
「あ、ちょっと。」
恒子は美枝子の腕にさわった。目配せされた方に眼をやると、星山が、あの大きな図体で、だぶだぶの服をつけて、あちらへ歩いてゆくところだった。
「わたしたちの方を見て、引き返していらしたようですよ。」
美枝子は肩をすくめて笑った。
「だから、おばさま、姙娠の効果はてきめんでしょう。」
恒子はじっと美枝子の顔を見た。
「いったい、あんたは、どうして星山さんがそんなに嫌いなんですの。危い噂までたてて……それほどにしなくてもねえ。」
「しんから嫌い。もう我慢なりませんでしたの。御商売がどうの、御様子がどうのと、そんなことではありませんわ。わたくしに直接なんとも言わないで、菅野の奥さまを通して、甘言を竝べ立て、しつっこく言い寄るなんて、そのやり口もいやですけれど、それもまあよいとして、あの指輪が気に入りませんの。