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けしょうのもの

化生のもの

豊島 与志雄

「世界」1950(昭和25)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,086 字 · 27 页

青空文庫

美枝子が知ってる男たちは、殆んど凡てと言ってもよいくらい、彼女に対して、馴れ馴れしい態度を取り、一方では、持って廻った曖昧な言葉遣いをするのだった。それが、浅野はまるで正反対なのである。

髪の毛はこわくてばさばさだが、眼鏡をかけていない細面の顔は、蒼白い方で、上品にさえ見える。

「浅野さん。」と美枝子は呼びかけた。「あなたに、すこし伺いたいことがあるんですの。」

浅野がびっくりしたように顔を挙げると、美枝子は頬笑んでいた。

「哲夫のことですけれど、なんだか勉強に身がはいらないように思われますが、どういうものでしょうかしら。いったいに、この頃の中学生なんか、生意気になってるようですけれどね。」

その聞き方に、実は、身がはいっていないのだった。女中が持って来た紅茶に、彼女はウイスキーをさしてやり、自分の紅茶にもウイスキーをちょっぴりさして、匙ですくっては味をみ、またちょっぴりさして、匙で一掬いずつ味をみていた。子供が戯れに味わってるみたいで、銀の匙と小さな爪とが光りに映えていた。

「哲夫君のことなら、御心配いりませんよ。頭もよいし、真面目じゃありませんか。