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ほっかいのなみにさらわれたが
北海の波にさらわれた蛾
小川 未明
「童話」1926(大正15)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,968 字 · 10 页
「また、島でお目にかかれるかもしれません。どうぞ、ご機嫌よう……。」と、つばめは、暇ごいをして、彼らの仲間のいる林の方へ飛んでいきました。
蛾たちは、自分らも明日立つかどうかということについて、相談しました。このとき、かわいらしい淡紅色の高山植物の花は顔をこちらに向けて、
「明日は、風になりますよ。」と、注意したのです。その言葉は、あまり蛾たちには顧みられなかった。
高い山脈の頂は、明るく雲切れがして、日は暮れてしまいました。一夜は無事に過ぎて、翌朝になると、空はいつものごとく青く晴れていました。このとき、蛾たちは、空高くつばめの群れが、林から旅立って、北を指して飛んでゆく姿をながめたのでした。
「俺たちもいこう!」
蛾の群れは、つばめたちの後を追って、旅立ったのでありました。
その後で、高山植物は、しきりに頭を動かしていた。はたして、昼ごろから、夜にかけて、強い南から吹く嵐と変わってしまった。
つばめらは、予期したごとく、嵐を脊に負って、安々と島に着いたけれど、蛾たちは、ひとたまりもなく、海の中へ吹き落とされて死んでしまったのであります。
――一九二六・三――