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ほっかいのなみにさらわれたが
北海の波にさらわれた蛾
小川 未明
「童話」1926(大正15)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,968 字 · 10 页
「あなたがたは、どこから、ここへ飛んできたのですか?」
「あちらの暗い、深林の中から飛んできました。もう、あの陰気なところは、いやでたまりません。」
「そうじゃありません。いつか、恋しくなることがありますから……。」と、白いりんごの花は、静かにいいました。
蛾たちは笑いました。こんなにじょうぶな羽を持っているのに、生まれた林に、いつまでもじっとしている理由がわからなかったからです。
「私たちにも故郷があります。それは、遠い北海の中の島です。そこには、どんなにりんごの木がたくさんあることか。そのほか、いろいろの草があって、香気の高い紫色の花や、黄色の花が、春から、秋にかけて絶えず咲いています……。」
「どうして、こんなに遠いところへ、あなたたちはいらしたのですか?」と、こんどは、蛾が花に向かってたずねました。
「人間が、その島から、私たちをつれて、こんなところへ持ってきたのです。人間は、かってなことをするものです。私たちは、もうどんなことがあっても故郷へ帰ることはできません。」と、花は、悲しそうにいいました。
「そうですね。あなたには、飛ぶ羽がありませんものね。