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ほくりくのみんか
北陸の民家
中谷 宇吉郎
「日本の民家第八回月報」美術出版社、1959(昭和34)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,402 字 · 3 页
そして、たいていの家では、この座敷は、日常生活には、ほとんど使われていない。
土間は、取り入れ時に雨の多い北陸の農家では、大事な仕事場であり、かつ倉庫でもある。したがって、建坪の半分ぐらいは、この土間が占めている。普通、真ん中に幅のせまい板が通っていて、それが廊下の役目をしている。台所は、この土間の片隅の暗いところにあって、そこに筧で水を引いている家が多い。流しは、土間に直接おかれているので、台所仕事は、しゃがんだままでする。食器なども、数が少なく、暗い流しの片隅に、飯茶碗と皿とが、いくつか白く見えている程度である。
恐らく、徳川時代の一般の農家は、こういう姿であったのであろう。そして明治の末になっても、北陸の片田舎には、まだ徳川時代の面影が残っていたのである。この頃では、さすがにこういう農家は、非常に少なくなっていることであろう。しかし少し山村になると、まだ似たような生活が残っているのではないかと思われる。ただ写真などには出ないので、誰も知らないのであろう。
町家も、一般庶民の家は、貧しいものが多い。まさぶきの屋根に石を載せて、風でまさが吹きとばされるのを防いでいる家は、今でも汽車の窓からよく見る風景である。