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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし

十二神貝十郎手柄話

国枝 史郎

国枝史郎『十二神貝十郎手柄話』。同一底本的分册已合并为一书。收入:十二神貝十郎手柄話、加利福尼亜の宝島。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 127,035 字 · 254 页

青空文庫

隼二郎叔父さんを見てやろう)

で、貝十郎は灌木を巡り、横手の方から前の方を見た。紅い帯を結んだ初々しいお三保の姿――背後姿が見え、その前に立っている痩躯長身の、四十年輩の男の姿が見えた。蒼白い顔色、黒い頤鬚が、陰険の相をなしていた。落ち窪んだ眼窩の奥の方で、瞳がチロチロ光っていたが、それも人相を深刻にしていた。

(これは大変な怪物だぞ)貝十郎は眉をひそめた。(俺に取っても強敵らしいぞ)

隼二郎はお三保に何か云っていた。しかしきわめて低声だったので、貝十郎へは聞こえなかった。と、二人は歩き出した。そうして間もなく見えなくなった。

行く手に小広い野があって、丘がいくつか連らなっていたが、その丘の向こうに征矢野の屋敷が、どうやら立っているようであった。

(さて、これからどうしたものだ)貝十郎は思案した。

(とにかく征矢野家まで行って見ることにしよう)しかし十歩とは歩かなかった。

「もし、お武家様、お待ちなすって」こう背後から呼ばれたからである。振り返った貝十郎の眼の前にいたのは、二十四、五歳の若い男であった。

「何か用かな」と貝十郎は訊いた。

「へい」と若い男はニヤニヤ笑った。