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じゅうねんのおもいで

十年の思い出

宮本 百合子

「文章倶楽部」1926(大正15)年8月号

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,123 字 · 7 页

青空文庫

、間断なくあるでしょうが、どうしても力の入れ方がちがってくるのだと思います。これはまた一面人々の性格にも依ることで、そうはっきりも決められることではありませんが、今の世の中で、自分の仕事を仕ようとする女の人は、必ずどちらかを犠牲にしなくてはならないようです。特に一つのものに力を集中しなくてはいられないところのある私の場合、あんな風に不幸な家庭生活の終りをきたしたわけです。

そして今ちょうどその総決算をしているようなものです。一昨年の秋、初めて『改造』へ発表した「聴き分けられぬ跫音」がその最初をなすもので、それからずっと近頃のものまで、連作の形をとっているのです。つまり、「崖の上」「白霧」「苔」と順々に発表してきましたが、此の秋『改造』へ載せるので、それも一落着きになるつもりです。これはまるで、五年間の家庭生活に、はたきを掛けたり、拭いたり、お掃除をしているようなもので、これが済んだら、気持の上にも一段落ついてきっと何か新らしいところへ出られるだろうと思っています。まだはっきりした形をとらない未知のものに対して、楽しい期待を抱いています。

総じて私は気持のきっかけや、変化を主にして、考えたり記憶したりする癖があるので、時日や、時日の長さなどは、随分矛盾したり、間違えたり、忘れたりして、少しも正確ではないの