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ちよこ

千世子

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年11月25日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 83,104 字 · 164 页

青空文庫

どことなく神経質らしく見えるこの子の、時々赤くなったりうす笑いもしたりするのが、千世子には無暗に可愛らしく思われた。

そのしまった白い額を見ながら、もうじきにここまでも油ぎって色も黒くなるんだろうと思うとどんなに美くしくどんなに尊げに見えて居てもその後にせまって来て居る身ぶるいの出るほど千世子にいやな事を目の前にうかべて、それをなでたり又さわる事なんかは出来なかった。

花でもって飾られて千世子は家に帰った。大きいコップに入るだけの花を入れて豌豆のつるは床の間の花かけにさした。小さなコップに丸るく盛花にして千世子はしのび足をする様にして達ちゃんのマドンナの絵のはってある机に置いて、格子のかげでのぞきながら笑って居る主婦にかるく頭をさげて部屋に入ってしまった。

母親は、

「まあこんなによく摘んだネエ、いいところだったかえ」

とはればれしたこえできいた。

「ええかなり、でも行く道が阿母さんなんか通れないほどせまいところがあるから二宮さんの方から参らなくっちゃあ行かれますまい、きっと。つれてってあげましょうか?」

返事をしながら千世子はまだ美くしいこの花を入れてHのところに便りしてやろうと思って居た。