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ちよこ(さん)
千世子(三)
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,906 字 · 54 页
鼻声でこんな事を云った。
千世子が何にも返事をしないで居るうちに入口に二つの黒い顔が重って見えた。
お入んなさいよ。
わだかまりのない声で千世子は云った。
君! お入りよ。
篤はも一人の肩を押て扉を開けたまま千世子のわきに行った。
いらっしゃいまし。
千世子は新らしい客を見て云って篤の方に目を向けて、
どなた?
何ておっしゃる方?
ときいた。
「あの――笹原の肇って云うんです。
早稲田だねえ、君!
小さい時っからの仲よしなんですよ。
「まあ、そんなら今までお目に掛らなかったのが不思議な位ですねえ。
ああそれから、
貴方こっちへいらっしゃいよ。
千世子は京子をまねきながら、
この方はね、私がもう随分長い間つきあってる人で山科のお京さんて云う――
絵をやってます今。
ごく簡短な紹介めいた事をすると四人は丸くなって腰をかけた。
京子は千世子のそばにぴったりとよって笹原って云う人は篤の傍をはなれまいとして居た。
四人の間には破る事の出来ない「初めて会った人」と云うへだてが出来てどうしても千世子と篤ばかりの話になり勝になった。
「のけもの」と云ういまわしい感じをさけるために千世子はだれにでも話しかけた。