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せんにんばり

千人針

寺田 寅彦

「セルパン」1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,835 字 · 4 页

青空文庫

日清日露戦争には厳島神社のしゃもじが流行したように思う。あれは「めしとる」という意味であったそうである。千人針にもついでに五銭白銅を縫付け「しせんを越える」というおまじないにする人もあるという話である。これも後世のために記録しておくべき史実の一つである。いずれにしても愛嬌があって、そうして何らの害毒を流す恐れのないのみならず、結果においては意外に好果をも結び得る種類の事柄である。これに反してどんなにもっと恐ろしい色々の迷信が今の世に行われて、そのためにどんなに恐ろしい害毒を流しているか、そっちの方が実に大切な問題だという気がする。国家国民の将来を危うくするような迷信が眼前の日本に流行してはいないか。よくよく心を落付けて反省してみなければならない。(昭和七年四月『セルパン』)