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ちよじょ
千代女
「改造」1941(昭和16)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,997 字 · 23 页
私が女学校四年生の時の事でしたが、お正月にひょっくり、小学校の沢田先生が、家へ年賀においでになって、父も母も、めずらしがるやら、なつかしがるやら、とても喜んでおもてなし致しましたが、沢田先生は、もうとっくに、小学校のほうはお止しになって、いまは、あちこちの、家庭教師をしながら、のんきに暮していらっしゃるというお話でありました。けれども、私の感じたところでは、失礼ながら、のんきそうには見えず、柏木の叔父さんと同じくらいのお年の筈なのに、どうしても四十過ぎの、いや、五十ちかくのお人の感じで、以前も、老けたお顔のおかたでありましたが、でも、この四、五年お逢いせずにいる間に、二十もお年をとられて疲れ切っているように見受けられました。笑うのにも力が無く、むりに笑おうとなさるので、頬に苦しい固い皺が畳まれて、お気の毒というよりは、何だかいやしい感じさえ致しました。おつむは相変らず短く丸刈にして居られましたが、白髪がめっきりふえていました。以前と違って、矢鱈に私にお追従ばかりおっしゃるので、私は、まごついて、それから苦しくなりました。きりょうが良いの、しとやかだのと、聞いて居られないくらいに見え透いたお世辞をおっしゃって、まるで私が、先生の目上の者か何かみたいに馬鹿叮嚀な扱いをなさるのでした。