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ちよがみのはる
千代紙の春
小川 未明
「少女倶楽部」1923(大正12)年9月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,985 字 · 11 页
「尾をつかんで、上げてみせろなどといわなけりゃ、こいが逃げてしまうことはなかったのです。どうか、このこいのお金をください。」と、おじいさんは、おばあさんにいいました。
おばあさんは、甲高な調子になって、
「なんで、受け取りもしないのに、代金を払うわけがあるかい。かわいい孫の口に入らないものを、私は、お金なんか払わないよ。」と、争っていました。
このとき、集まった人々の中から、頭髪を長くした易者のような男が前に出てきました。
「おばあさん、こんなめでたいことはありません。死んだと思ったこいが跳ねて河の中へ躍り込むなんて、ほんとうにめでたいことです。きっとお孫さんのご病気は、明日からなおりますよ。孫のかわいいのは、だれも同じことです。このおじいさんにもかわいい孫が家に待っているのだから、おばあさん、こいの代金をはらっておやりなさい。」と、その髪の長い男はいいました。おばあさんは、こいの代金なんど払うものかと思っていましたが、いまこの男のいうことを聞くと、なるほど、もっともだと思いました。そこで、おばあさんは、しなびた手で財布の中から銭をとり出して、おじいさんに払ってやりました。