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ちはやかんのめいろ
千早館の迷路
海野 十三
「ロック 増刊 探偵小説傑作選」1947(昭和22)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,829 字 · 50 页
第二に、キャバレの関係を丹念に叩きまわった結果、怪しいことを聞き出した。それは過去半年あまりの間に、田鶴子に対して情念を非常に燃やして接近していた若い男の中の五名ほどが、揃いも揃って予告なしに突然このキャバレから足を引いたことであり、しかも彼等は帝都の他の踊場にも全然姿を見せないとのことだった。そしてそのキャバレでは、田川勇が今にも姿を消すだろうという噂をたてていたが、それがどうやら本当になったろうし、ここ数日ぱったり顔を見せなくなったといっていた。
「今頃は、田アちゃん、おそろしい女蜘蛛に生血を吸いとられているんだろう」
と、楽士のひとりがいいだしたとき、指揮者の森山は顔色をかえて、
「あ、いけないよ、そんな不吉なことをいっては……」
と、両手を振った。
第三に、四方木田鶴子が去る二十四日、上野駅から栃木県の那谷駅までの切符を手に入れて出掛けたことが分った。これは田鶴子がよく行く割烹料理店の粋月から聞き取ったものであったが、この切符はその粋月の料理人の野毛兼吉が買って来たものであった。田鶴子は間違いなく二十四日の昼間上野駅を出発した。ところがその同じ日の夜、兼吉も暇を貰って郷里の仙台へ出発して、まだ帰って来ないという。