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ちはやかんのめいろ
千早館の迷路
海野 十三
「ロック 増刊 探偵小説傑作選」1947(昭和22)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,829 字 · 50 页
「もっとも、この次、時計が鳴れば二十八日になりますが……。この手紙の日附より一週間後といえば、二十五日に七日を加えて、つまり、四月一日となる。ははは、春部さん、失礼ながらあなたは田川君から四月馬鹿で担がれているんじゃありませんか」
「いいえ、そんなことはございません」
言葉と共に、彼女の小さい靴がこつんと床を踏み鳴らした。真剣な光を帯びた大きな眼。
「よく分りました。全力をつくしてあなたの田川君を探し出しましょう。あと四日の余裕がありますから、その間に解決してしまいたいものです」
「どうぞ、そうお願いいたします。そしてわたくしも先生のお伴をして、捜査に従事したいんです。さもないとわたくしは、不安と孤独感とで気が変になってしまうでしょう。ね、先生、お連れ下さいますわね」
カズ子が今にも帆村の前に脆きそうに見えたので、帆村はあわててそだを掴んで立上った。そして火の子を散らしながら、暖炉の中へ折って入れた。
「だがねえ、春部さん」
帆村は眉をひそめていった。
「私の予感を正直に申上げると、この田川君の家出事件には不吉な影がさしていると思いますよ。あなたは聰明だから、やはりそれを察して居られるんだと思いますが……」