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ちはやかんのめいろ

千早館の迷路

海野 十三

「ロック 増刊 探偵小説傑作選」1947(昭和22)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,829 字 · 50 页

青空文庫

「せ、先生。どうなすったんですの」

春部の声に、帆村は自嘲を停め、

「カズ子さん、謎は解けました。全く子供騙しのような謎なんです」

「どうして、それが……」

「私はポン助だから、今気がついたのですよ。いいですか。ここは千早館でしょう」

「ええ、そうです」

「千早ふる神代もきかず龍田川――知っていますね。小倉百人一首にある有名な歌です。その下の句に、からくれないに水くぐるとはとあるではありませんか。からくれないとは、正面奥の、あの真赤に塗った壁です。水くぐるとはこの水族館です。左右の金魚槽の間を脱けて奥へ進めば、水くぐるです。最後の『とは』はすなわち『戸は』です。正面に見ているのは『戸ろ』だから、その隣りに『戸は』がある筈です。その『戸は』を開け――というのがこのところに集められた謎の解答なんです。行ってみましょう、この奥にある筈の『戸は』のところへ。それからきっと、秘密の間に続く道があるんでしょう」

帆村は謎を解き捨てた。

「綺麗な答えですわ。やっぱり奥へ行けばいいのでしたわね」

春部は身を翻して奥へ駆入ろうとする。それを帆村が呀っと叫んで引戻した。

「待った、恐ろしい関があるんだ。