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せんりがんそのた
千里眼その他
中谷 宇吉郎
「文藝春秋」1943(昭和18)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,478 字 · 26 页
その廠の中にも技術者もあることだから、そういう人たちはどうしているのかと聞いてみると、病状は大いに馨しくない。二、三忠言をする人があっても、「理窟などは要らないのだ。要するに鉄が出来ればよいじゃないか。現に出来ているのに、学者は何をいらないことを言うのだ」と相手にされないらしい。事実その友人が、その製錬法で作ったという鉄の標本を持って来たのを見ると、立派な純鉄である。こういう物が出来るはずはないのだが、論より証拠で、出来てさえくれれば文句はない。
しかし論より証拠というのが曲者で、本当は論を覆し得る証拠などというものは滅多にないのである。そういうとまた、その論というのが結局現在の科学の法則のことであり、現在の科学というのが西洋で出来た学問である。「どうも日本の学者はどれもこれも欧米崇拝で困る。日本的科学をやらないで、西洋人の後ばかり追っている。そしてたまに純日本式の製鉄法などを発明する男があると、それにけちをつけ」るということになる。事実この問題に関して、そういうことが度々言われたのである。仕方なく若い真面目な技術者たちは「ああ、あの畑製錬のことか」