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せんりがんそのた
千里眼その他
中谷 宇吉郎
「文藝春秋」1943(昭和18)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,478 字 · 26 页
しかし事柄は簡単明瞭なので、よく理解はされたことと思うという話であった。
しかし肝腎な「製鉄事業の拡張」はちっとも停らない。南洋の方で鉱業関係で莫大な金を儲けた実業家と、某官庁の部長の人とがこれに加わって、火の手は揚るばかりである。そのうちに軍の事業として、大規模に製産することになったらしく、既製の大工場を三つ買い上げることになった。某セメント会社の工場と外二つがその候補に挙げられた。H教授の話では、その三つの工場はどれも、水運がよく電気が廉く理想的な立地条件にある工場で、こういう工場ばかりを狙うところに、案外問題解決の鍵が潜んでいるようだということであった。
買い上げられる会社の方では、これは死活に関する大問題である。その会社の専務とかいう人に会った時に、この製鉄事件に関した文書の綴りを見せられたが、厚さ三寸ばかりも溜っていたのにはちょっと驚いた。結局その会社の方の猛運動とH教授の努力と、その他各方面からの忠言とによって、最後の場面に到って、この日本式製鉄法は中止され、千里眼と同じ運命で闇から闇へ無事葬り去られることになった。
すっかり問題が片付いてから、H教授に「君の千里眼も大分役に立ったよ」