轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
みなみさんのこいびと
南さんの恋人
豊島 与志雄
――「小悪魔の記録」――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,630 字 · 36 页
おれは諦めて、口笛をふきながら立去っていった。
三
その夕方、おれは南さんを千疋屋の二階に見出した。思った通りだ。いや思ってた以上に、南さんは晴れ晴れとしていた。どこでしたのか、髯を剃って、一風呂あびて、靴まできれいに磨かせているし、洋服や帽子の埃もはらってある。ホテルを出ていった時の様子とちがって、これなら、立派な紳士だ。
南さんはコーヒーをのんでいた。暫くすると、立上ったのであるが、出て行きはしないで、奥の食堂の方へ行き、食事をはじめた。コーヒーをのんでから、初めて空腹に気づいたのだろう。なるほどよく見れば、みなりはととのえているが、まだ頭はぼんやりしてるらしい。脹れていた顔付が、こんどは肉がおちて色艶がなく、眼瞼がはれぼったく、視線が重々しく据って、それでいてじっと物を見るのでもない。晴ればれとしてるのは様子だけで、精神はどんよりとしてるらしい。
南さんは食事をすまし、またコーヒーをのんで、そこを出た。そしてゆっくりと、じれったいほどゆっくりと歩いて行く。もうふらついてはいないが、足に力がなさそうだ。そして額には一抹の曇りがある。暫く歩いてから、ビヤホールにはいって、ジョッキーを半分ばかりのんだ。