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なんとうをおもいて
南嶋を思いて
新村 出
――伊波文学士の『古琉球』に及ぶ――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,941 字 · 14 页
尤も右の琉球語彙は冊封副使の徐葆光が康煕五十八、九年(享保四、五年)即西暦一七一九、二〇年在琉中に自ら蒐集したものではなく、康煕二年(寛文三年)即一六六三年に渡航した冊使(4)張学礼の『雑記』中に収めた単語を基礎としたことは『伝信録』巻六琉球語の緒言に書いてある通りである。これより先き明の万暦三十年(慶長七年即一六〇二年)の冊使夏子陽の『使録』(刻本)には、琉語が載ってあった。更に遡った嘉靖十三年(天文三年)即一五三四年の使節(5)陳侃の記には巻末に夷語夷字を附録したとあるからは、琉球語彙が集められたに違いないが徐氏の時代所伝の鈔本には闕けてしまい、我邦に伝わって、白石の『南島志』の資料にも成った『使琉球録』はやはりこれを欠いていたことと思う。明朝の陳夏両使の蒐集も徐使の訂正して載せた清朝の張使の蒐集も共に訛謬甚しきものであって、正確な材料とはいわれぬけれど、琉語の古史料の乏しきおりから、十分なる注意を以てこれを利用するは適当と思う。写音した蒐集者が人であるか北人であるかに由てその琉語の読方も大に異るわけであるが、語頭音たる唇音の場合には割に都合よくその音価を定め得る。