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なんぽうゆうしん

南方郵信

中村 地平

「文學界 第五巻第四号」文藝春秋社、1938(昭和13)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,899 字 · 42 页

青空文庫

そして、遠足などの時のように、垢のたまった脛をちらつかせながら、跣足で行列について歩いた。先生がいよいよ汽車に乗ってしまうと、高等科の女生徒などは、声をあげて泣きだしたが、お浜だけは悲しそうな顔もせず、相変らずにやにや笑いながら、木柵にもたれて、先生を眺めていた。見ている人たちに、それは哀れな、奇妙な感じをあたえた。

まだ日の暮れない秋の夕であった。馬力の六やんは隣り村からの帰り径、千両坂のてっぺんで休んでいた。

坂のてっぺんには一本松が在って、松の樹の下には、石の地蔵さまが祭ってある。六やんはふりのいい、太い松の枝に馬をつなぎ、自分は地蔵さまの前にかがんで、煙草をふかしていた。松の梢では烏の群が無気味な声で啼きあい、賑かな羽音を時折り、六やんの頭上に落下させている。松の枯れ葉が顔にちりかかる。

間もなく六やんは煙管を腰の煙草入れにしまいこみ、背のびしながらたちあがった。そして馬の手綱をほどいたあと、なに気なく坂の下を眺めた。六やんはびっくりした。

お浜の住み家であるトタンぶきのあばら屋から、辺りをうかがうようにして、一人の男が戸外の薄す闇のなかに出てきたのである。