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なんがをかくはなし
南画を描く話
中谷 宇吉郎
「中央公論」1941(昭和16)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,968 字 · 24 页
それは或る晩吉田さんが遊びに来ていて、また私が南画を描き、吉田さんがそれを見るということになった。そのうちに一つ合作を武見国手に贈ろうじゃないかという話が持ち上った。それで先ずあいかわらずの雪を描いた。そしたら吉田さんが、速座に Il neige doucement sur la ville と仏蘭西語で賛をした。私は聊か度胆を抜かれて「巧いものだなあ」とひどく感心した。吉田さんはにやにやしながら「なに、ランボウの焼直しさ」と済ましていた。
それを送ってから一月くらいして、上京のついでに武見さんの家を訪ねた。そしたらその絵がちゃんと表装されて、床の間にかかっていた。大変よい表装なので、大いに感謝の意をこめて、一体何処でこういう表装をしたのかと聞いて見た。そしたら「博物館でいつも国宝の修理をしている表装屋に頼んだんだよ」という答であった。そして「なかなか良い墨だそうだね。その表装屋さんが、こういう墨は珍しいと大変褒めていたよ」ということであった。大いに力を得て、「それだけですか」と聞いたのであるが、「うんそれだけさ」という返事で、聊か物足らなかった。