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なんばんひわもりうこんまる

南蛮秘話森右近丸

国枝 史郎

「少女倶楽部」1927(昭和2)年4月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,869 字 · 112 页

青空文庫

大きな御殿を押し建ててやるさ」

「つまらないことを云ってるよ」

「アッハハ、つまらないかな」

苦く笑ったが猪右衛門はにわかに聞耳を引き立てた。

「どうやら帰って来たらしい」

なるほどその時門の戸が、ギーッと開くような音がした。

「おや本当だね、帰ったようだよ」

二人同時に起き上った時、部屋へ駈け込んで来た少年がある。例の風船売の少年である。

「おお猿若か、どうだった?」先ず訊ねたのは猪右衛門。

「どうだもこうだもありゃッしないよ、うまくいったに相違ないさ」引き取ったのは玄女である。

「そうだろうね、え、猿若?」

「待ったり」と云うと猿若少年、走って来たための息切れだろう、苦しそうに二つ三つ大息を吐き、胸を叩いたがベッタリと坐った。それから喋舌り出したものである。

「まずこうだ、聞きな聞きな、『秘密の鍵は第三の壁』『この人形を大事にしろ』弁才坊めが云っていたってものさ。ああそうだよ民弥にね。綺麗な綺麗な娘によ。全くあいつア別嬪だなあ。姐ごなんかよりゃアずっといいや。……ええとそれから風船だ、飛ばして置いて引いたってものさ、云う迄もないや、糸をだよ。するとパッチリ二つに割れ、パラパラこぼれたのは毒薬だ。