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なんばんひわもりうこんまる

南蛮秘話森右近丸

国枝 史郎

「少女倶楽部」1927(昭和2)年4月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,869 字 · 112 页

青空文庫

室の広さ十五畳敷ぐらい、そこに置かれてある器物といえば、測量機、鑿孔機、机、卓、牀几というような類である。窓から投げ込まれる春の陽に、それらのものが艶々と光り、また陰影を印けている。

極めて異国趣味の室である。

牀几に腰かけた二人の男女、民弥とそうして右近丸、清浄な処女と凜々しい若武士、この対照は美しい。

「秘密の鍵は第三の壁、こう確かに弁才坊殿には、仰せられたのでございますな?」いずれ話の続きだろう、こう訊いたのは右近丸。

「はい、さようでございます」こう答えたのは民弥である。直ぐに後を云いつづけた。「弑せられる日の夕暮方、父が申しましてございます。秘密の一端明かせてやろう、室へおいで、来るがよいと……で、この室へ参りましたところ、父が申しましてございます。『秘密の鍵は第三の壁』それから更に申しました。『この人形を大事にしろ』ただそれだけでございました。どうやら父と致しましては、もっともっと何か詳しいことを、話したかったのでございましょう、そう申してからもしばらくの間考え込んで居りましたが、その中日が暮れて宵となり、そこの窓から何者か――近所の子供だとは存じますが、覗いているのを目つけますと、フッツリ黙り込んでしまいました。