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なんろ
南路
宮本 百合子
「太陽」1922(大正11)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,813 字 · 63 页
空は、いかにも暖くあおく、明るい。
赤や茶や緑や、種々な樹木は、近く見ると濃厚な色絨毯のように、遠く眺めると、ぽかぽかした雑色に、耕野の涯(はて)を区切っている。
明に、色の交響楽を感じる。自然は、やや元始的に賑やかなのを感じる。
けれども、その中に、ぽつねんと立っている泥色の黒人は、見る者に、何という寂寥を感じさせるだろう。北緯三十五度辺の、南部に近い温帯の眠さ。
不思議な物懶(ものう)さと憂鬱とが、派手な、然し透明を欠く色彩に包まれて澱んでいる。永遠の晩秋。ひっそりとした風景。
耳の長いドンキーに、沢山綿を括りつけてのろのろと黒人が影を追って行くのを見る。
北部カロライナと、南方カロライナのちょうど境界線の上にあるブラックスブルグで、始めて、停車場に“Coloured”“White”と、別にした札を下げてあるのを見た。
私共は、ポーターが持って来てくれた嵌(は)め込み卓子を中にして、話したり、地図を拡げて見たり、骨牌(カード)、ドミノをいじったりして、単調な一日を送った。
四
眠っているうちに、アラバマは通り抜けてしまったのだろうか。