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なんろ

南路

宮本 百合子

「太陽」1922(大正11)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,813 字 · 63 页

青空文庫

ニュー・オルレアンスという街は、たとい黄金で道路を葺(ふ)いてあっても、我々には淋しいストレンジャアであったろう。

○

昼見ると夜見るのとでは、同じ場所でも全然異った感じを与えられる。

晩食を早めに終って停車場へ来て見ると、燈光が隅々まで煌めき渡った建物の内部は、まるで今朝来た処とは思えない。一時預けにして置いた手荷物を取り、赤帽に荷の始末を頼んで、我々は、発車に間のある列車に這入(はい)った。

窓枠や扉の仮漆(ヴァニッシュ)は、相変らず天井の燈で燦ついている。暗緑色の座席には、同じように微かな煤煙の匂いが漂っている。

暫くで馴れた光景を見出すと、自分は深い懐しさを覚えた。ここでは、少くとも、二人で腰かけていられるだけの場所がある。――

我々は、ちらほら人のいる幾つもの車室を抜けて、最後尾の展望車に行って見た。

デックに立って見ると、ちょうど、改札口が目の前にある。木棚一重に画られたそこには、黒い顔をした大人や子供が、ずらりと首を並べて凝っと動かない列車や、乗込もうとして急ぐ旅客、威厳を繕って腕組みする同じ黒人のポータア等を眺めているのである。