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ききにおけるりろんてきいしき

危機における理論的意識

三木 清

「改造」1929(昭和4)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,790 字 · 16 页

青空文庫

である。

独断論は最も多くの場合階級的な意味のものである。しかるに独断論は、まさに独断論として、思想的には無力であるほかない。思想の危機に際会しては、独断論は必然的に最も独断的とならざるを得ないから、思想的にはいよいよ無力となり、かくて独断論は思想そのものの立場から他のものへ転化してゆく。最初には、思想に対するに思想をもってすべきであると主張した独断論は、思想の危機が激成し、拡大するに立ち到るや、今は、あらゆる実践的な手段に訴えることとなる。独断論において、理論的なものは実践的なものに必然的に転化する。しかるにこの転化は、この場合、実に理論そのものの否定を意味する。思想の危機が本来階級の危機であるからである。独断論が本質的にはなんら思想そのものの上に立つのでないからである。このようにして、一定の階級によって階級的な立場から、実践的に思想の否定が行なわれるに到って、思想の危機はまさしく思想そのものにとっての危機となる。

我々は思想の危機にあたって理論的なものが実践的なものに推移してゆくのを見た。しかも同時に我々はそこにおいて理論そのものの否定が実行されているのを知った。