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ききにおけるりろんてきいしき
危機における理論的意識
三木 清
「改造」1929(昭和4)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,790 字 · 16 页
しかるにかかる自由主義は現在の社会において我々はこれを徹底し得るであろうか。なるほど、危険思想の研究が自由に許されているとする、そこでいまひとりの者がこの思想を研究しているとする、しかし彼はまさに危険思想の研究者なる故をもって、会社でも、銀行でも傭ってくれず、否、大学においてさえ使ってくれない。研究の自由は彼にとって貧困の自由を意味する。彼の研究の自由はかたっぱしから彼の行為の自由によって否定されてゆく。行為の自由を得ようと思えば、彼は研究の自由を否定しなければならぬ。自由主義は階級社会の中では現実的に存在し得ないのである。
思想の危機にあたっては、理論的意識は実践と結びつくことによってのみ現実的であることが出来る。このとき実践はもとより単なる理論の否定ではない、それは独断論者のことである。実践は理論にまで高められ、理論は実践にまで深められ、かくて理論と実践との弁証法的統一がなければならぬ。理論と実践との弁証法的統一の上に立つ理論的意識のみが、思想の危機に際して、ただ一つの現実的なる理論的意識である。しかるにかくのごとき理論的意識は今や社会的に危機にある階級、すなわち支配階級の中では獲得されることが不可能である。